作品名
女餓鬼の呪淫 鬼母に堕ちるくノ一
ペンネーム
三紋昨夏
作品内容
登場人物の紹介
伊月春華(いづきはるか)
御庭番の女忍。深紫髪を美少女。幻術と再生の忍法を使う。虎太郎とは許婚の仲。幕府の命令で失踪事件が相次ぐ妻鹿貴之國の内偵調査に向かう。
甲原虎太郎(かんばらこたろう)
御庭番の男忍。三毛猫に化ける擬獣忍法を使う。許婚の春華と任務をこなしている。幕府の命令で妻鹿貴之國に潜入するが、朧姫に好意を寄せられる。
赫狼(せきろう)
御庭番の忍犬。大陸狼の血をひく赤毛の大型犬。甲賀の忍び里で、虎太郎に育てられた。
夜叉丸(やしゃまる)
妻鹿貴之國を治める領主。齢九十を超える老人で、人前に姿を現わさない。
皐鬼那(さきな)
夜叉丸の奥方。白銀髪の妖艶な美女。十年前に嫁入りし、朧姫を出産した。妊娠を繰り返しているが流産している。
朧姫(おぼろひめ)
夜叉丸と皐鬼那の一人娘。母親似の美女。八歳だが大人の身体に化けられる。父母の凶行に心を痛めている。
狼奈(ろうな)
妻鹿貴家に仕える侍女。巨躯長身の巨女。猟犬の管理を任されている。
〈過去の人物〉
伊月白雪(いづきしらゆき)と伊月佐助(いづきさすけ)
春華の両親。十年前に妻鹿貴之國で消息不明となる。
甲原沙世子(かんばらさよこ)と甲原龍太郎(かんばらりゅうたろう)
虎太郎の両親。十年前に妻鹿貴之國で消息不明となる。
本編
- 【序章】隠居の女僧と三毛猫
- 【第一章】妻鹿貴之國に棲む業魔
- 【第二章】消えた女忍の運命
- 【第三章】背信と堕落
- 【第四章】再会と忘却
- 【第五章】新月の夜、獣囚の牢名主
- 【第六章】満月の夜
- 【第七章】皐鬼那の淫謀
- 【第八章】呪胎交姦の朔夜、鬼母が孕む刻
- 【第九章】鬼母堂の開帳、朧月が曝く真実
- 【終章】伊賀と甲賀の混血児
講評
定義 | 魅力 | 提示 | 総合 |
---|---|---|---|
A | A | A | A |
今回の悪堕ちコンテストにおいて、評点が満点に近いという観点では、最も悪堕ち作品として完成した作品と呼べる。
前回に引き続き応募作品の中でも際立った文章力と構成力が発揮された小説作品であり、悪堕ちに特化した作品であることを除いても、小説作品として純粋にクオリティが高い。
序章と終章を含み全11章構成である本作品は、各章が読みやすい長さに区切られており、また各章で誰がどう動くかといった章のテーマが把握しやすい構成で、高い文章力もあって非常に読み進めやすい。
また、序章においては示唆的な会話が提示されていることで冒頭から物語に引き込まれること、また章が進むごとに積み重なっていく謎が、終盤に怒涛の勢いで設定が回収され、解けていくという構成もあって満足感が高い。
いわゆる和風の悪堕ちであり、人を食う「鬼女」をテーマにしている点ではありふれた設定ではあるものの、「鬼になる」という行為が分かりやすく「悪」を示していることもあり、なにが悪堕ちであるかというのがイメージしやすい。
更に、鬼が人を食う欲求と、食ってしまったら鬼に堕ちてしまうという不可逆性、もしくは主人との性行為によって更に強固に鬼たちが繋がっていくという設定を絡めることで、悪堕ち単体としても、成人向け作品としても、その魅力が存分に詰め込まれている。
一方で人を食うという設定故に、食われる人が犠牲になるなど、作品全体を通して残酷な表現や描写が多く登場することがあり、これらがノイズとなって純粋に作品が楽しめなくなるという弊害もあるだろう。
そういった危うさと天秤に掛けられたテーマの選定である。
コンテストの評価において非常に優秀な作品であったため優秀賞として選出されているが、同時に小説作品として最初から最後まで楽しませてもらった作品であったため、堕研賞としても選出させてもらった。