魔力を用いて発動させる作用のことを「魔法」と呼ぶ。
厳密には、技術や技能によって発動することができるものを「魔術」、その内容が体系的に分類できず、個々人に紐づくものを「魔法」と呼ぶ。
これらは、物を浮かせたり、指先に火を灯したりといった小規模なものから、周囲の水蒸気を一気に凍らせたり、任意の空間で爆発を起こしたりといった広範囲に影響のあるものまで様々存在し、それぞれ見た目には魔術か魔法かの見分けはつかないため、これらをまとめて「魔法」と呼ぶのが一般的となっている。
これを踏まえ、各個人によって再現可能な魔法を「魔術」、そうでないものを「魔法」と呼ぶことができる。
例えば、「祈りを込めたお守りを持っていれば魔除けの効果となる」のは魔術に分類される。これは系統としては魔術の中でも「聖術」に分類され、きちんとした手順を踏んで術を発動させることで、誰でも同様の効果を得られるため、再現性のある魔法=魔術ということになる。
魔術はそれぞれ発動に正規の手順が必要で、低級なものであれば指の動きなどで可能だが、上級のものになれば長い詠唱が必要となるなど、発動までに手間と時間が掛かるのが普通である。
こういった手順を先に織り込んでおくことですぐに発動することができるマジックアイテムが存在する。これらは誰でも手軽に発動することができるため、日常生活に溶け込み、広く重宝されている。
一方で魔法はこういった手間を必要としないが、使用者が保持する魔力の性質によって発動できる魔法の系統が異なる。さらに、体内に保持している魔力を体外に出し、それを魔法として行使するための知見と技術が必要であり、魔力を保持しているからといって全ての人が自由に魔法を使えるわけではない。
魔力を保持しているかどうか。その魔力を魔法として行使できるかどうか。保持している魔力の系統がどれか。それぞれが人によって異なる故に、「魔法使いは素質」と言われる所以である。
この観点では、魔術は魔力を消費して作用するもの、魔法は魔力そのものを行使するもの、と表現することもできる。
魔力の性質がどの系統かは人によって異なるが、例えば聖術の名門である「ウィター家」や退魔の名門である「アンテモニオ家」に連なる者たちは聖魔法の素質を持っているといったように、血筋に影響を受けることもある。
このように魔法は個人に紐づいてしまうが、それを擬似的に回避する方法がいくつかある。その1つが「触媒」である。
例えば「銀」は、銀そのものに退魔の効果があるだけでなく、この銀を触媒とすることで魔法を発動させることができる。もっとも、厳密には魔法が使えるようになるわけでなく、本来であれば発動条件を満たさない「魔術」を、短時間で簡略化して発動させているというものであるため、魔法本来の性質を持たない。
吸血鬼との戦闘において、いかに素早く、効果的に聖系統の魔法・魔術を扱えるかということが戦闘能力に直結するヴァンパイアハンターにおいて、こういった「銀魔法」の技能は必須とされている。
なお、魔力は生物にしか宿らず、生きていないもの:死霊などは魔力を持っておらず魔法は使えない。吸血鬼も“この世のもの”ではないため基本的には魔法を使用できないが、人間から吸い取った血を貯蔵しておくことで人間起因の魔力を抽出し、人間と同じ魔法を擬似的に使用する個体もいる。