「血」
それは吸血鬼であるシエラの生命の源であり、同時に吸血鬼である彼女が求め、そして彼女を狂わせるもの。
自らを血に染めた姿を見た彼女は、秘められた「獣」を解放する。
吸血鬼となった姉シエラの主として、普段は厳格な態度を心掛けるエリス。吸血鬼となった後もエリスはシエラを、そしてシエラもエリスを信頼し、主従関係を超えたパートナーとして結び付いている。しかし、時にはシエラの妹として、姉に甘えたくなるときもあれば、わがままを通したいときもある。そういうときに彼女は、そっと、邪な表情を見せるのである。
「よく来たな。これは君に協力をお願いする私の誠意だと思って欲しい」
吸血鬼たちをまとめ上げ、吸血鬼の「盟主」となったエリス。吸血鬼としての圧倒的な実力に裏打ちされた不遜な態度で、彼女はただ一人、新しい来訪者を試す。
「私を吸血鬼の盟主エリス・リゼアルクの妻、ミア・レスト・リゼアルクと知っての狼藉か」
私は彼女の力になれないのか。
彼女に守られることしかできないのか。
自らも剣を取って戦うという結論。
彼女の力になれなくてもいい。
せめて彼女の足手まといにはなりたくない。
自分の身は自分で守る。
その信念が漆黒の鎧となって顕現する。
「驚いたか? このような私でも、私の本分は未だヴァンパイアハンター、吸血鬼を狩る者だ。それに、既に協会からは離れている身。あの戦闘服も好きだが、こっちの方もそれらしいだろ?」
吸血鬼へと堕ちながらもヴァンパイアハンターとしての誇りを失っていないシエラ。
彼女が吸血鬼を狩るのは主人の命か、それとも人間としての矜持からか。
「驚いたかしら? お姉ちゃんにきちんとしたヴァンパイアハンターの衣装があるなら、私にだって吸血鬼としての正装があってもいいでしょう? まぁ、私がこんな格好をするのもここだけだけど。雰囲気、出てるでしょう?」