シスターエリス

「あの教会についてなにか知ってる?」

私はベアトリスに尋ねる。

「いえ、この土地のことは詳しくないもので。そうですね、建物としては200年前の古い様式のようですし、かといってなにか特別なモノのようには見えません」
「そう」

私は少し考える。

「……あの教会にあると思うのよね、例の魔導書」
「例の……というのは、いま研究されている秘術に関してですか?」
「まぁそんなところね」

ベアトリスは私の返答を聞くや、少し鋭い目つきで教会の建物を見つめ始めた。

「そうですね……潜入は容易かと思いますので、少々準備にお時間をいただければと」

私を真剣な眼差しで見つめるベアトリスが視界に入った。

「潜入は容易なのね?」
「はい、あの外見の建物であれば、だいたい構造は同じですので、予想通りの構造と警備であれば、さほどは」
「じゃあ私が潜入するわ」
「……はい?」

私の返答に驚いたように眉をぴくりと動かしたのが見えた。

「ミア、昨日私が作っていた服があったでしょ? あれ出してきて」
「かしこまりました」

そういってすぐにミアが持ってきてくれた服に、ミアにも手伝ってもらって着替え始める。
よく見てはいないけど、ベアトリスはこっちを見ながらわなわな震えているように感じるが、いつものことなので気にしないでおく。

「どう? すごいでしょ? これなら完璧にあの教会のシスターとして紛れ込めるよね」

全身を覆う黒いシンプルな服に頭にかぶせたベール。それはまさに……

「昨日ね、街中で見掛けたシスターの服がいいなって思って、見よう見まねで作ってみたの。どうかな?」
「エリスの技術は素晴らしいですから、ほぼ問題はなかったのですが、本物に近づけるために少し手直ししました。それと、その太腿の部分はエリスの魅力を引き立てるために必要だと思ったので、改良しておきましたよ」
「ありがとうミア!」

ミア、とても素晴らしい私のパートナーだ。

「じゃ、行ってくるね」

私は扉に手を掛け、ミアに向かって「大丈夫よ」という笑顔を向けて扉を開けようとした。

相変わらずベアトリスが言葉を失って震えている様子が見えた。
面白いので放置しておこう。


シスター姿のエリスのイラストをけだまとん様に描いていただきました!

また、新しいイラストも描いていただいております!

シスターエリス(リメイク) 吸血鬼
シスターエリス(リメイク) 人間