作品名

魔法少女が敵の囁き責めで歪め堕とされる話

ペンネーム

みやこじま

作品内容

 人々が平和に暮らす街中に、突然いくつもの巨大な結晶が突き出し、遅れて悲鳴が周囲に広がった。瘴石と呼ばれるそれは、異界から現れた魔族たちが自らの版図を増やすために生み出したもので、瘴石やそこから召喚される魔物たちの影響を受けた免疫のない人間は、瘴石を増やすための尖兵として操られてしまう。
 サイレンがあちこちで鳴り、助けを求める人々の叫び声が止まぬ街。

「響く心は正義のために!魔法少女レゾナンスハート!ここに推参!」 そこに一筋の閃光とともに現れ、瘴石のひとつを破壊したのは一人の男装をした魔法少女であった。白に青の縁取りがされた軽装の鎧を身に纏い、色とりどりの宝石が施された細身の剣と盾を振るう青い三つ編みを一本にまとめた少女は、舞うような動きで大通りの魔物たちが敵に対応する間もなく切り伏せ、盾で吹き飛ばし、あるいは蹴り飛ばして倒してゆく。
「魔法少女だ!」「レゾナンスハートさんが来てくれたんだ!」
「みんな!ボクたちが来たからもう大丈夫だよ!さあ!”空に海に心に響け!レゾナンスブラスト!”」
 逃げ延びた人々の声援に手を振って応えると、さらに剣を逆手に持ち、柄尻の宝玉をマイクのようにして叫ぶと、轟音の波動が剣先から響き渡り、直線上の魔物が魔力の共振で消し飛び、人々を浄化する。
彼女の声が響き止んだ時には、通りの敵は一掃されていた。

「マイ、もうこっちに来て大丈夫よ」
 あとは残ったわずかな敵をしらみつぶしに探して探すのみと判断した男装の魔法少女は、襟につけたマイクで味方を呼び出す。数分もせずに彼女の周囲に装甲車の小隊が到着し、そこから兵士と魔法少女の混成部隊が流れるように展開していった。
「レゾナンスハートさん!私をマイって呼ぶなとあれほど申し上げたのに!いえ、そんなことよりまた独断専行で突入しましたね!」
 兵士で魔法少女の、レゾナンスハートを含めた部隊の指揮官である緑服の少女は、周囲の安全を確保し市民の救護が始まるや否や、独断専行をした青髪の魔法少女に食ってかかる。
「ごめんねマイ、ボク、みんなが苦しんでるのを見過ごせなくてつい……」
「今月に入って3度目ですよもう!せめて一言くらいは指揮官に話してから飛んでいってください」
「えへ、次からは気をつけるよ」
「それも今月入ってから3度目ですからね!もう!」
 2人が部隊結成以来、何度も繰り返しているやり取りを尻目に、安全となった地点から救護所の設営や周囲の偵察が進められてゆく。こうして今日の魔族の襲撃も何事もなく終わるかと誰もが思っていたその時、周囲が闇に包まれる。
「これは……!」
「まさか、上級魔族の反応!?全部隊、展開地点に集結して!」
 空が暗い赤色に変わり、地面に描かれた魔法陣から再び巨大な瘴石の結晶が生まれる。そして生成された瘴石からは、いつもの下級魔族に加えて、翼の生えた人型をした黒いドレスの魔族がゆっくりと2人の方に歩を進めてきた。
 「総員、上級魔族に全力射撃!」
 マイティブレイズの指令で、部隊の全ての火力が敵に向けて間断なく叩き込まれる。小銃や機関銃、そして攻撃魔法が引き起こす破壊の嵐の後には、完全に破壊された道路と、防御魔法の膜に包まれ無傷の上級魔族が存在していた。
「あら、物騒なご挨拶ね」
 全ての輝きを吸収する黒い長髪と、同じ色の翼とドレスで身を飾った魔族はそう言いながら前髪を払う。彼女が存在するだけであたりに重圧がかかり、部隊の兵士も魔力の影響を受けだしている。
「マイティブレイズ、ボクが時間を稼ぐからあなたは部隊全員で撤退して」
「レゾナンスハートさん!?」
「ボクも頃合いを見て撤退するから」
「……わかりました」
 魔族がなぜか行動を起こさない中で、部隊はバリアと煙幕を展開し、周囲市民たちを装甲車へ乗せて撤退を開始する。その中でレゾナンスハート一人が魔族に向かって進み、飛行して斬りかかった。
「……マイ、元気でいてね」
――レゾナンスハートは、彼女の狙い通りに時間を稼ぎ敗北した。彼女も魔族との戦いの中での行方不明者の一人として扱われ、もとの姿を現すことは二度となかった。

 敗北から意識を取り戻したレゾナンスハートは、自分が魔力の鎖で拘束されていることに気付いた。
「あら、起きたかしら」
「あまりよい目覚めじゃないね」
 目の前には彼女を倒した黒衣の上級魔族が立っている。
「私は魔族デルタ。これからあなたの主人となる存在よ。」
「主人だって……?」
「そう。今からあなたには瘴石を増やす尖兵、魔石瘴女になってもらうわ」
デルタは彼女の黒いドレスの胸元に生えた赤い結晶、魔族の力の源である瘴石から複製を生み出し、顔の前にかざす。
「ボクは瘴石を破壊し、みんなを守る魔法少女だ!そんなものになんか――」
「さて、どれくらい耐えられるかしら」
『私は瘴石を増やす尖兵』『私は瘴石を増やす尖兵』『私は瘴石を増やす尖兵』
デルタによって胸元に埋め込まれた赤く輝く瘴石から、快楽の波ともに暗示が流れ込んでくる。
「ボクは魔族からみんなを守る魔法少女!これぐらいはなんとも――」
「そう、じゃあ追加でいかが?」
嗜虐的な笑みを浮かべ、長い爪で無防備な腹部を撫でながら、デルタはそう言ってもう一つ赤く輝く瘴石をレゾナンスハートのへその上に置き、わずかに残る霊力の護りを突破して癒着させる。
『『私は瘴石を増やす尖兵』』『『私は瘴石を増やす尖兵』』『『私は瘴石を増やす尖兵』』
「ぼ、私はっ……魔法、少女、でっ……」2つに増えた快楽と暗示に、徐々に思考が結べなくなってくる。
『『『私は瘴石を増やす尖兵』』』『『『私は瘴石を増やす尖兵』』』『『『私は瘴石を増やす尖兵』』』
 いつの間にか額に3個目の瘴石が植え付けられたことに気づいたのは、声の響きがより気持ちよく感じるようになってからだった。
「私は、瘴石を増やす……じゃ、ない……!」
「このままどんどんつけてあげてもいいんだけど、それだと壊れちゃうかなぁ?……そうだ!」
 何事かを思いついたデルタは、人間を基に作り出した自らの複製を2体呼び出し、快楽に耐える魔法少女の左右にしゃがんで耳元へ口を近づけさせる。耳を通る柔らかな吐息の感触に彼女が悶える様子を楽しんだあと、
「わたし、はっ……、しょう……まほぅしょ、わた……」
「「わたしはぁ♥、瘴石をー♥、ふやすー、せんぺい♥ 」」
 なおも耐える彼女の両耳からそう複製に囁きかけさせた。
心に響く無機質な瘴石の暗示に加えて、レゾナンスハートの言葉を打ち消すように紡がれる△の蠱惑的な言葉の調べは、数周もせずに彼女の表情を緩ませていく。得意げなデルタの見守るなか、

「わ、わたしは……しょう、せきを、増やす、せ……ん、ぺ……あ♥……」「「わたしはぁ♥、瘴石をー♥、ふやす、せ♥ん♥ぺ♥い♥…… 」」
「わ……た……し……は、瘴石を……ふやす……尖……兵」
「「わたしはー 、瘴石をふやす、尖兵 」」
「わたしは、瘴石を増やす、尖兵 」
「「わたしは 瘴石をふやす♥、尖兵 」」
「「「わたしは♥瘴石を増やす尖兵♥」」」

 3つの口からの声は重なり、中央の少女も艶めかしい笑みを浮かべつつ自らを犯す言葉を口ずさんでしまうようになった。
「さあ、新たな魔石瘴女の誕生よ!」
 魔法少女だったものの魂が陥落したことを確信した魔石瘴女は立ち上がり、レゾナンスハートの額、胸、臍に融合した瘴石へ邪悪な力を流し込む。すると3つの石は彼女を覆うようにミシミシと音を立てながら膨れ上がり、傍らにいる分身も飲み込んで奇妙な形の紅い石へと姿を変えてゆく。
その瘴石は暗く明滅しながら次第に形を人のそれへと歪ませ、デルタが見上げるほどの頭身へと身体を組み替えた。
 女性のように見える瘴石像の明滅が収まると、大ぶりな胸から瘴石の紅い破片がパラパラと零れ落ち、磁器のような白い肌が露わにる。表面の崩壊はくびれのある腹部、肉感的な臀部、そしてすらりと長い手足へと波及してゆき、最後にもとのレゾナンスハートを大人にしたようで、しかし彼女とは隔絶した美しさの顔と腰の下まで伸びた硬質的な赤い髪が現れ、額と胸、そして臍の3つの欠片を除いて全ての瘴石が破れた殻として床へと落ちた。
「……ふふっ♥」
 新たに生まれ変わった女性の、閉じられていた瞼がわずかに開き、柔らかな朱の瞳で周囲を見渡す。そのまま艷やかな唇を尖った舌先で舐め、
「変、身♥」
 そう小さく言葉を口にした。言葉に呼応した3つの瘴石からは帯のような黒い光が周囲に放たれ、一度彼女の全身を何重にも緊縛する。
そして先ほどの変化を再び繰り返すかのように胸元からリボンの断片が剥がれてゆき、純白の肌に対照的な黒いレオタードとそれを強調する左右だけのスカート、肩先までの長い手袋、尖ったハイヒール、そしてそれらを装飾するさらなる赤い瘴石を晒し、最後に額の瘴石から増殖した瘴石がサークレットのように頭部を一周して魔に従い戦うための装束が完成、
『響く言葉は堕落の調べ 魔碩囁女ませきしょうじょフリュスタラ、デルタさまの尖兵としてここに光臨しましたわ♥』
囁くものの名を持つ魔女が両手を広げて小さく発した声は、デルタの脳に響くように伝わった。
「あの男勝りな子が、素敵な美人に仕上がったじゃない」
『ええ、デルタ様の写身もいただいて、わたくしとっても素敵な身体へと仕立てていただきましたわ♥』
成人男性と比べても長身なデルタが、さらに見上げるほどの身長のフリュスタラは、体をゆるやかに一回転させながらそう感謝する。揺らぐ衣装とともに、花のような魅惑的な香りが周囲に広がった。
「それじゃあ、次はどうしょうかな」
『あら、わたくし、次にすることは決まっておりましてよ』
「へえ、フリュスタラはなにをしたいの?」
『決まっております♥』
『まずは目の前におります』
『可愛らしい♥お嬢様を』
『めいっぱい愛でさせていただきますわ♥』
 デルタがわずかに感じた違和感を警戒心へと変える隙すらなく、舞うような動きで近寄った魔女の魔法のような言葉の波動で腰砕けになり、そのまま掬い上げられて耳元で囁かれる。
『たくさん囁いていただいた分、何倍もの気持ちよさで響かせて返してあげます♥』
「尖兵としての……使命はっ……むっ 」
 なおも義務を果たそうとするデルタの口を艷やかな赤い唇で塞ぎ、さらに舌で抵抗をこじ開けると、瞬く間に彼女からも舌を絡めて愛し合うまでに堕ちていった。
『んぷっ ……何かのために戦うのですから、いくらそれがわたくしの存在意義であれ、愛がなければいけませんわ♥』
レゾナンスハートだったときの彼女の理屈を歪めて紡ぎながら、姫のようにデルタを抱え寝室へむかうフリュスタラ。
デルタは結局、囁く魔女の愛によって陥落した魔人と魔法が作り出す瘴石で覆われた王国、その第一王妃としてこのあとも永遠に愛を囁かれることになるのであった。

講評

評価基準について

定義魅力提示総合
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評点一覧

男装の魔法少女が敵女幹部の手によって堕とされて魅惑的な美人となる展開。
キャラクターの容姿の描写や場面の展開を含め要素が簡潔に表現されており、全体的にコンパクトにまとまっていることで、悪堕ちのエッセンスのみを堪能できることに特化した悪堕ち作品となっている。

特に今回堕とされるヒロインに関しては、堕ちる前の魔法少女の姿の描写、堕とされる際の手法、堕ちた後の姿の描写などは特に力を入れており、こういった観点で悪堕ちらしさに関しては評価が高い。

しかし、これらの要素のみに力を入れ過ぎている印象があり、要素間に関連性がなかったり、悪堕ちの魅力の芯以外は軽く扱われているように見える。

例えば主人公に限った話でも、魔法少女の姿がなぜこのようになっているのかといった経緯や行動原理に関する描写がなく、その延長上で堕ちた後の姿がなぜこうなったかなどに関する説明もない。
また、作中に「マイ」という人物が登場するが、それが「マイティブレイズ」から来ていることの説明がなかったりと、要素としては作中に存在するものの説明がなかったり、関係性や連続性が見えなかったりすることが多い。主人公や敵女幹部、モブに至るまでのキャラクターの深掘りがなされていないことで、キャラクターへの愛着、ひいては作品に対する没入感も薄くなってしまっている。
こういった世界観の構築とその表現という観点で魅力点と提示点の両方が低くなっている。

もちろん、本作のような軽い構成でも、悪堕ち前後および敵女幹部のビジュアルが提示されるだけでも印象が変わってくるし、きちんと作品の読み方を誘導すれば書かれていない部分を読者側の妄想に委ねることができる。
作者が悪堕ちジャンルが好きであることは堕ちる際や堕ちた後の行動からも分かるし、フェチの盛り込み方も決して悪いものではない。
「この作品を読んだ読者に自分が伝えたかったことが伝わっているか」という観点で、相手に楽しんでもらうためにはどうすればよいかを念頭に何度も物語を読み返して補強していけば、より良い作品になっていくだろう。