「オルタ」または「オルタナティブ」とは「代替の」という意味で、「対象キャラクターの別の側面」という意味で用いられることが多いです。

オルタの意味

「オルタ」は「オルタナティブ」の略称です。
オルタナティブとは英語で alternative のことであり、日本語では「代替の」や「主流に替わる新しいもの」といった意味があります。

正確には alternative は形容詞で、「オルタ」の部分に該当する alter は動詞(他動詞)ですが、いずれも日本語の文脈では名詞として用いられることが多いです。
※英語の alter は日本語の発音では「アルター」が近いです

アニメやゲームといった創作作品においては、「代替の」や、またはそこから派生した「別の/もう一つの可能性」という意味で使われています。

「オルタナティブ」の一般的な意味についての話はここでは割愛します。
気になる人は「オルタナティブストーリー」や「オルタナティブスクール」などのキーワードで検索してみてください。

オルタの歴史

「オルタナティブ」という言葉は「オルタナティヴ・コミック(オルタナティブコミック、オルタナコミックまたは単にオルタナなど)」に見られるように、1980年頃にアメリカで発生した概念を受ける形で日本でも古くから漫画で用いられていました。

ゲームに関しても、例えば『フロントミッションオルタナティヴ』(スクウェア/1997)や『マブラヴ オルタネイティヴ』(age/2006)といった作品のタイトルに用いられるなど、様々な作品で見ることができます。

そういった単語としてのオルタナティブではなく、作品におけるキャラクターを指す呼称と概念としての「オルタ」を確固たるものにしたのがFateシリーズ(TYPE-MOON/2004~)に登場する「セイバーオルタ」です。
これは、セイバーというキャラクターが既に作中に登場しているのですが、この「セイバーの別の側面が顕現した姿」として登場、「セイバーオルタ」という名前が与えられています。

セイバーオルタは、初登場となる『Fate/stay night』(TYPE-MOON/2004)およびその関連では、元々はこういった呼称ではなく、「黒セイバー」や「黒いセイバー」、「黒化セイバー(黒化英霊)」と呼ばれていました。
「セイバーオルタ」という呼称が登場したのは、「黒いセイバー」がリボルテックでフィギュア化された2007年の『リボルテック・セイバーオルタ』です。これに加え、『Fate/stay night』の格闘ゲームである『Fate/unlimited codes』(カプコン/2008)のPS2版でセイバーオルタが追加となった際に、キャラクター紹介にて公式に「セイバーオルタ」という呼称が公開されており、この呼称が定着していきました。

以降もFateシリーズにて、オルタという名前を冠したキャラクターたちが登場していくことになりますが、Fateシリーズ以外でも、ほぼ同様の概念として「オルタナティブ」を用いる作品や、二次創作としての「オルタ化」も増えていきました。

悪堕ちとオルタの関係

「オルタとは悪堕ちのことである」と認識されることがありますが、オルタナティブの原義や現在の使われ方としても「悪堕ち」という意味は含まれていません。

ただし、「オルタ(オルタ化)」を悪堕ちという意味で用いることも、作品によっては間違いではありません。
例えば前述の『Fate/stay night』に登場するセイバーオルタは、セイバーの別の側面が顕現した結果、そのキャラクターはセイバーが悪堕ちしたような状態になり、実際にも主人公陣営と敵対することになっているためです。

このセイバーオルタですが、『Fate/stay night』以外の作品では敵対しないこともあり、セイバーのバリエーションとして登場することもあります。
つまり、該当のキャラクターがオルタ化しても、悪堕ちの条件を満たさなければ悪堕ちとは限らないということです。

ジャンヌオルタは悪堕ちか?

この「オルタ」に関して、よく話題となるのが『Fate/Grand Order』(アニプレックス/2015~)に登場する「ジャンヌオルタ(ジャンヌ・ダルク〔オルタ〕)」が悪堕ちに該当するかどうかという話です。

結論から言えばジャンヌオルタは悪堕ちなのですが、これを詳しく説明しようと思うと彼女のストーリーを細かく引用する必要があるためここでは割愛し、次に述べる1点でのみ本理由とします。

ジャンヌオルタは、見掛けは同作に登場する“聖女”ジャンヌの堕ちた姿なのですが、前述の「オルタ」の意味「そのキャラクターの別の側面が顕現した」わけではありません。
同作に登場する、とあるキャラクターが、ジャンヌを復活させ、フランスへ復讐するために、彼が願った姿がジャンヌオルタには反映されています。彼によって生み出された、ジャンヌとは別に存在するキャラクターと解釈することができ、故に本物のジャンヌとは同一の存在ではないということになります。

本物のジャンヌが堕ちたわけではないため、この観点では「ジャンヌオルタは悪堕ちではない」と判断できますが、「ジャンヌを元に生み出された、ジャンヌが悪堕ちしたらこうなるという姿がジャンヌオルタである」という観点では「ジャンヌオルタは悪堕ちである」と判断できます。
これらの判断のポイントは、悪堕ちを同一個体であると限定するか、それとも第三者視点での客観的事実をもって判断するかの違いです。

こういったこともあり、同じ「オルタ」であっても、さらに言えば同じシリーズの作品であっても「オルタ」に込められたニュアンスが異なり、セイバーオルタを悪堕ちと呼ぶ理由も、ジャンヌオルタを悪堕ちと呼ぶ理由も異なっています。
もし議論をする場合は、必ず「悪堕ちの定義」と「オルタの定義」と「どの作品を対象にしているか」を明確に表明したほうがいいでしょう。

オルタとアナザーの違い

オルタナティブ(オルタ)とアナザーの違いは、英語初学者にとっては難しい概念とされています。

これらの違いについては、いくつかの項目に基づいた説明がなされることがありますが、ここでは以下のように考えています。

オルタナティブ(オルタ)アナザー
本来の意味別の選択肢(主に二者択一)
もう一つの可能性
主流に替わるもの
別の
キャラクターにおける概念別の側面別の存在
代替性の観点代替を示す
※必ず対象のものと置換される
代替でなくてもよい(追加など)
同類性の観点別のもの(特により良いもの、目新しいもの)を指す同じものまたは似たような分類で括られるものを指す

例えばセイバーオルタを例にして考えてみます。
セイバーオルタに対し、「アナザーセイバー」というキャラクターがいたとしましょう。

まずセイバーオルタですが、オルタとは「二者択一のうちのどちらか」「別の側面」「代替される」というニュアンスがあります。
「二者択一のうちのどちらか」とは、セイバーにおいては聖人か暴君かということ、「別の側面」とは、聖人がデフォルトの側面であるのに対して暴君の側面が選択されるということ、「代替される」とは、暴君の側面が選択されたら聖人の側面は消滅すること、と解釈できます。
まとめると、セイバーオルタは「聖人の側面としてのセイバーと暴君の側面としてのセイバーがキャラクターの中に可能性として内包されており、暴君の側面が選択されて顕現した姿」となります。

一方で「アナザーセイバー」がいた場合、同じ世界に別のセイバーがいて、共存してもいいということになります。
更にこの場合のアナザーセイバーは、例えば年齢による差異や、過去の事件による分岐などによって違うキャラクターになっていても構いません。

補足:アザーについて

アナザー(another)に対してアザー(other)という言葉がありますが、これもまた違いを理解するのが難しい単語でしょう。

another は直訳すると「別の」であるのに対し、other は「他の」と訳されます。
another は対象を追加で持ってこれるのに対し、other は話題にしている対象の集合が定まっています。

例えば飲み物A、飲み物B、飲み物Cが入ったコップがそれぞれあるとしましょう。
飲み物Aが入ったコップを選んでAを飲み干した後で「another A がほしい」となった場合は、飲み物Aを持ってくる必要があります。
対して、「A の other の飲み物がほしい」となった場合は、残りのBかCを選択することになります。

先ほどの「セイバー」の例で言えば、「another セイバー」は「セイバー・リリィ」などが該当するでしょう。
対して、「other セイバー」となれば、例えば仲間になっているセイバーの中で、現在選択しているセイバー以外のセイバーのことであったり、セイバークラスに該当する他のキャラクター(アルテラなど)が該当します。